発電用の重力式コンクリートダム。昭和31年竣工ですから弥栄や小瀬川より古いことになります。
6キロ離れた大竹市の玖波発電所に水を送っています。大竹の臨海地域は,広島市と同様に戦後,旧軍施設跡地に企業誘致をして,昭和30年頃には石油コンビナートがつくられるなど,急速に発展した地域です。
県西部のダムにはこうした発電系のダムが多く,特に昭和30年代には広島市周辺にいくつもつくられており,広島県の高度経済成長を支えていたといえます。
天端は車NGですが,開放はされています。
天端の入口にはどーんと発電系ダムならではの取水設備があります。壁の感じからこの建物だけは新しそう。
弥栄の赤,小瀬川の青,渡ノ瀬の黄色は意図的に?
吸い込まれそう。
ローラーゲートは飾り気のない薄グレー。次に交換か塗り替えをするなら黄色にしてほしい。
ゲートに1号,2号って何のひねりもないネーミング。いかにも実用重視なところがよい。
天端の壁もいい具合に苔が生えて味があります。上の手すりは接合部のコンクリの色が違うから後付けでしょうか。
ダム湖の渡ノ瀬貯水池。地図で見ると結構広いようです。
推測ですが、この照明は竣工時よりもう少し後になって設置されたのではないかと思います。ちょっとデザイン感があるので。高暮ダムの時もそう思いました。
右岸上流側からダムサイト。砦のような姿。
「中國」「堰堤」ですよ。ヤッシーや小瀬ガッパのような「ゆるキャラ」なんて許されなさそうな風格。
ダム脇には中がつぎはぎだらけのトンネル。いや…「隧道」というべきか。出口がすぐ天端への進入路なので天端から車で出る時はご注意を。
天端付近はあちこちフェンスでガードしてあるわりに,反対側から簡単に入れてしまう(入らなかったけど)。もう人間ならとっくに定年退職しとる年齢だから、細かいことは言いなさんなという雰囲気。
ちなみに,今回は右岸も左岸も堤体下に入り込む道を見つけられませんでした。オープンのようだけど,肝心な所はスキがない。
大竹の工業発展に尽くしてきた渡之瀬ダム。西向きに構えて小瀬川や弥栄の方向を見つめる昭和のいぶし銀ダムは,今の時代の趨勢をどう見ているでしょうか。
春愁や 令和の渡之瀬翁ながむ
広島県公認ダム全踏破まで残り11基