ダムのほそ道

広島県内(とその近県)のダムの訪問記録です。

57 鱒溜(ますだまり)ダム

北西部ダムめぐり。飯ノ山ダムの次に訪れたのは鱒溜ダム。地図上は立岩ダムの方が近いけれど、めがひらスキー場あたりから北上する最短ルートは冬期通行止めのため,国道186号→国道191号→県道296号と迂回し、鱒溜ダムの方を先に訪れました。

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トイレはここで済ませておきます。(道の駅来夢とごうち)

 

狭い県道296号(といっても高暮ダムの時ほど悪路ではありません)を太田川に沿って遡上していくと現れるのが鱒溜ダム(場所

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発電用の重力式コンクリートダム

 

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清水放流設備とはいわゆる清水バイパスでしょう。太田川は国の「魚がのぼりやすい川づくり」事業で,全国的にも優秀な結果を残したようで,太田川河口からこの鱒溜ダムまでサツキマスが遡上してくるそうです。(鱒溜の名のとおり鱒の行き止まりなんですね。ダムは戦前につくられてますが。)

 

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このダムは全面自然越流式! 天端もゲートもありません。この日は残念ながら越流は見られず。

 

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代わりに常用洪水吐からの放流がみられました。

 

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右岸の設備にはゲートのウインチらしきものが見えるので,ローラーゲートがあるのでしょう。ちなみに右岸側にはさらに1キロ上流の打梨橋を渡って廻りこむ必要があります。(時間がないのでこの日は断念。自転車持ってくればよかった。)

 

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あと数10センチで越流。

 

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貯水池は深緑で,対岸の景色がはっきり映っていました。ちなみにこの貯水池,あとで調べると結構堆砂がたまっているらしい。まさか80年もの間放置ってことはないよね…

 

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清水放流の出口。減勢工がなく堤体下が包み込むような形になっているのは二級ダムや沓ヶ原ダムと同じ。戦前のダムの特徴ですかね。

 

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貯水池を上流に歩いていくと右岸側に設備が。網場があるので発電用の取水口かな?

 

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さらに上流には打梨発電所。こちらは立岩ダムからの水で発電しています。

 

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ダムそのものは木と崖に囲まれてなかなか撮影スポットが見つかりませんでしたが,発電所のまわりにはいろいろ面白い物が。(中央は発電所の庇にあった巨大な蜂の巣。しかも二つ!)

 

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発電所の姿が映りこむ太田川。川魚の姿を撮ろうと目を凝らしていると,その発電所の裏の山から「ホ~…ッケキョッ」と。今年初めて聞く鶯の鳴き声。

耳を澄ましたけど,その一声だけで,二声目は聞かれず。

こんなに冷える山奥にも,春はやってきているのですね。

 

鱒溜 レンズ越しに聞く初音

 

公認ダム全踏破まであと6基

56 飯ノ山ダム

3月も半ばになり,そろそろ北西部の雪も大丈夫かな…ということで行ってきました。(広島県の北西部は県内では随一の積雪地帯でスキー場も点在しています。)

 

まずは発電用アースダムの飯ノ山ダム(場所

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公認ダムめぐりでは最後のアースダムです。

 

アクセスは中国道吉和ICが最寄りですが,高速代をケチって山陽道宮島SICから県道30号→国道186号を通りました。(500円ほど浮きました)

 

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MRC乗馬クラブの駐車場を通り過ぎ,奥に進むと天端への入口があります。僕はここで車を停めましたが,未舗装でもOKの車なら天端真横まで行けそうです。

 

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やけに芸術的な案内板。

 

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堤体の中にコンクリートの心壁があるという。貯水容量は公認ダムの中のアースダムでは最大。そのぐらいしないと水圧に耐えられない計算だったのでしょうか。

 

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その心壁というのが外見では分かりませんでした。天端に渡る橋げたの下に周りと違うコンクリートが見えますが,これじゃないよね。。。

 

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先達の皆様のレポートでは,天端入口には鎖がかけてあり入れなくなっているとのことでしたが,訪問時には鎖はかかっていませんでした。(というわけで入ってみます。)

 

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高さ30センチもないコンクリ製欄干は昭和7年竣工当時のものではないでしょうか。昭和初期のダムによくあるデザイン。パイプの柵は後付けでしょう。

 

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洪水吐は,橋を挟んでS字にカーブを描きながら流す仕組み。減勢するためかな?

 

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天端に沿って導水管が設置してあります。

 

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天端や堤体斜面のところどころにこうした札が立っています。下にはコンクリートの杭が打ち込んであって…他のアースダムでは見かけない物。心壁と関係があるのかしら?

 

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貯水池はかなり水位を下げています。

 

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おかげで斜樋の取水口や維持放流用の取水口を見ることができました。

 

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斜樋はほぼむき出しに。かろうじて下の取水孔が水音を立てて吸い込んでいました。

 

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ここの斜樋は小屋がありません。おかげでスピンドルの様子がよく分かります。

 

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下流側。アースダムにしてはちゃんとした減勢工がつくられています。

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左岸側から堤体斜面。右岸側からはフェンスがあって入れませんが,左岸側からなら入れてしまいます。こういうことが中電のダムではままあります(笑)

 

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堤体下。維持放流の出口工。管ではなくトンネルというのがいいですね。

 

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ちょっとした副ダム。いままで見たアースダムで最も豪勢なつくりだと思う。

 

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堤体下に下りる途中に見つけたキノコ。いわゆるサルノコシカケというやつ? 

 

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右岸側の少し高い位置から。あえて苔むした木を入れてみました。湿気があり,それでいて凛とした空気に包まれています。

 

 

 

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堤体全景。天端は75.8mと県内のアースダムの中ではコンパクトですが,カーブして下る余水吐の導流路と,きちんとつくられた減勢工。見えない心壁。設計・建設に携わった人の「誇り」を感じます。

 

3月半ばだというのに,山の中はまだまだ冷えていて,写真を撮る指もかじかんできました。しかしそんなことで弱音を吐いていては,この戦前生まれのダムに叱られそう,そんな気がしてきました。

 

冴え返る 飯ノ山に襟正す

 

公認ダム全踏破まであと7基

55 高瀬堰

広島市内のダムめぐり。最後に寄ったのはダムではありませんが,河川課のWEBページにダムとともに掲載されている堰,高瀬堰です。(場所

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県内のダムカードをコンプリートするためには,この高瀬堰と福山の芦田川堰にも訪れる必要があります。

 

広島市中心部に入って6本の川に分かれる太田川の洪水調節と上水,そして発電用の取水のために機能しています。

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ダム(バレッジ)カードがもらえるのは右岸の河川事務所高瀬分室。

 

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管理事務所の1F玄関には1/400の模型が展示してありました。

 

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立禁区域を確認して観察開始。

 

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管理事務所から歩いていくとまずキ●ンシー然としたかかしが迎えてくれます。すぐ下が魚道になっているので鳥対策のようです。鳥より人の方が怖がりそう。

 

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右岸脇の公園に巨大な解説版。さすが国営です。

 

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右岸に到着。天端は県道271号。左岸側の高揚団地と右岸側を広島市中心部に向かって走る国道54号を結んでいるため,交通量は多め。(たまたま車の少ない瞬間を撮りました。)

 

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魚道です。魚が遡上しやすいということで「土木学会環境賞」を受けたとのこと。

左岸側には船通しもあるのですが,撮り忘れました。こういう構造物はダムにはないので新鮮です。

 

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ローラーゲートは,小さめの流量調節用のものが1門(上)と横長の主ゲート(下)が6門。横長というのが河川の堰ならではですね。

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上流側をのぞみます。画像左側奥の山は,2014年の広島土砂災害でふもとの住宅街に甚大な被害を及ぼした阿武山です。災害後に新設された砂防ダムが見えます。

 

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広島土砂災害時には流木がひっかかってゲートを全閉できなくなるという事態が発生したようです。

 

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鉄道みたいに,こういうプレートも交換時に売り出したらダム好き垂涎ものでしょう。

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ところでダムカードには高さ5.5mとありますが,さっきのプレートには「高さ20m」って!? これは堰荘(建物)の上までの高さですね,きっと。

 

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河川敷に下りてみます。こちらは温井排水樋門。

 

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左は水位観測用の目盛りですね。上から何メートルと読むようになっています。右は何の標識だろう? 鉄道だったら速度制限解除,ボウリングだったらストライク(笑)

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堰を訪問したのは初めて。ダムとは違った魅力がありました。


それにしても,山奥のダムと違って周辺は車も人も多く,私服で脚立を担いで写真を撮っていると奇異の目で見られます(ような気がします。)。落ち着いてよいアングルをねらえません(極力,人や車を写りこませないためにも。)

 

人目を気にしているようではまだまだですかね。今度いかにも点検員ですというような作業服とヘルメットでも買おうか…

 

高瀬堰 春服で渡るぎこちなさ

 

一応,「ダム」カウントしていないので残り8基のままです。

54 宇賀ダム

広島市内のダムめぐり,3基目は安佐北区の宇賀ダム。発電用の重力式コンクリートダムです。(場所

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太田川支流の水内川がつくる谷間ののどかな農耕地を進んでいきますと

 

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奥に古代ローマの遺跡のような水路橋とその奥に宇賀ダムの堤体が姿を現します。何だかジブリの世界みたい。

 

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ダム便覧では堤体真下からの写真が掲載されていますが,残念ながら,現在は立入禁止。周辺は農地をイノシシ・熊から守るバリケードが張り巡らされています。

 

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静かな谷に鳥の声と農家の方が農具を使う音だけが響いて,神秘的な空間です。

 

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左岸から。この苔・錆の具合。いいですなあ。

 

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導水管は近くで見るとかなり大きな直径でした。下流にある間野平発電所に送っています。

 

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点検用のはしごがついてます。相当なスリルでしょうね。

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いろいろな角度から。世界遺産と言ってもよさそうな雰囲気。(まだ遺産じゃないですけど)

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渡ノ瀬のように「堰堤」ですね。字は渡ノ瀬より控えめな感じです。

 

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天端。「やめましょう」という自主性に訴えかけるトーンは中国電力特有の言い回し。
いっそ立入禁止としてくれた方がすっきりするのに。

 

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天端のパーツ。街灯は公園などでよく見かけるタイプ。右は風見鶏(飛行機)は何のために?

 

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調整池です。8割の水量です。

 

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太田川沿いの吉ヶ瀬発電所から放水された水が調整池に勢いよく流れ込んでいました。一度取水した水を複数の発電所に次々送っていく仕組みです。


 

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少し上流に歩いてダムサイトをとらえました。他の発電系ダムと比べるとすっきりして「要塞感」がありません。

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ラジアルゲート(黒かな?)が見えます。

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取水設備でしょうか。こちらもいいくたびれ具合です。

 

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帰り道に間野平発電所に寄ってみました。あとから中電のWEBページを見て気付きました。角度を変えて撮ったらあの導水管を撮れたのですね。しまった。。。

 

 

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それにしても広島市内にこんな場所があったなんて。明神ダムもですが,宇賀ダムもなかなかの隠れた名ダムだと思います。

 

宇賀の郷 畑打ちまたぎゆく懸樋 

 ※畑打ち:冬の間,手入れのできなかった畑の土を鋤き返して柔らかくすること。春の農作業。

公認ダム全踏破まで残り8基

 

53 梶毛ダム

広島市内のダム訪問。2基目は梶毛ダム(場所

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治水目的の重力式コンクリートダムです。

 

西風新都というニュータウンのすぐ西にあります。

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だだっ広い天端。

 

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ダムの周りと言えば山! というところばかりでしたが,ダム湖(神原湖)の向こうに見えのは住宅地。不思議な感じです。

 

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欄干のデザインはいたってシンプルでいてスタイリッシュ。手すりはライトが内臓されているのでしょうか。夜の様子も見てみたいところです。

 

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ダムサイトも広く,一見,オープンな雰囲気ですが,天端の先は行き止まりで,西風新都の公園が見えるのにつながっていません。一体的な公園にすればいいのに,いろいろ大人の事情があるのでしょうか。

 

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ダム湖は小さめ。湖というより池という感じ。

 

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堤体上流側。ダム湖は小さいですが自然越流式のクレストを8門も備えています。

 

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2008年竣工なのでかれこれ12年前。コンクリートはまだまだ白い!

 

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カスケードの導流部はゆったり目につくってあったり,副ダムの先は減勢護床ブロックを敷き詰めていたりと,減勢機能が強化されています。

 

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堤体真下に行く道は徒歩・車道とも封鎖されていて行けず,正面からは撮れませんでした。(人が訪れやすいダムは得てしてこうですよね。。。)

 

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やたら駐車場の広い管理事務所。ダムカードをもらいに中に入ると…

 

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玄関に国土地理院の地図をベースに県内の公認ダムを書き入れた地図が!!

 

のびぃ 「わぁ,この地図いいですね。。。」と思わずつぶやくと

 管理人 「でしょう。そういうの好きな職員が作ったんですよ。」

 の 「え~っ!? てことは売ったりもらえたりしないんですか?」

 管 「ですね。残念ながら。でも,ダム好きなアマチュアの方が趣味で作ってネットに上げてたりしますよ。」

 の 「…ですか。にしてもコレいいです!だって大谷池福山市北部の典型的ため池系アースダム)まで載ってるじゃないですか。」

 管 「あなたもダム好きなんですね。昔は南原ダム(中国電力所管のロックフィルダム。現在は無人でフェンスに覆われ,天端すら見られない。)にもダムカードをつくる話があったって知っていました?」

 の 「え~~~~!? 知りませんでした。」

  

…とここから,管理人さんのダムトークがゲートを開けた…いや,堰を切ったように流れ出し…

 

地域整備ダムというのなら梶毛ダムを治水目的だけにしているのはもったいない。

発電でもして近隣に供給すればよいのではないか。

自分ひとりじゃどうにもできないけどね…

 

…などなと,次々出てくる県内のダムにまつわる余間山話,管理人さんの夢と愁いを聞きました。

  

ああ,本当のダムを愛する人とはこういう人のことをいうんだな,と有り難い気持ちになってダムをあとにしました。

 

正直,ダムよりもこの管理人さんの方が印象に残っているような…

  

梶毛守のダム物語 しゃぼん玉 

 

公認ダムは残り9基です。

52 魚切ダム

今日は広島市内のダムを訪問。

 

大都市圏にお住まいの方は意外かもしれませんが,広島市政令指定都市でありながら,公認ダムだけで5基のダムがあります。(ちなみに,あの登山道を通った明神ダムも広島市内!)

 

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まずは佐伯区の魚切ダム(場所)。洪水調節・上水・発電など多目的の重力式コンクリートダムです。

 

先達の皆様は結構な確率で利水放水時に訪問しているようで,しぶきを被るほどというので期待していきましたが,この日はあいにく静まり返っていました。

 

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堤体下には無人の県営発電所。700kWの小水力発電ですね。

 

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発電設備をフェンス越しにちょっとのぞき込んでみましたが…よく分かりませんでした。

 

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赤いラジアルゲート2門。ゲートの数って設計時にどう決めているのかな? 

 

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これは…砂防ダムですね(堤体下右岸脇)。苔に魅せられて撮ってしまった。

 

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少し下流に行くと取水施設。

 

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左岸から。左右の山肌は堤体を包む感じです。

 

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昭和後期ダム特有の案内やモニュメント。(真ん中のは少し新しいか?)

 

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天端。街灯が妙に高い。

 

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ちなみに「魚切」は少し下流の地名。海水魚が遡上してくる上限ということなんだとか。

 

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こんな状況になるとはよほどの大物が釣れるらしい(笑)

 

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堤高は80m弱ですが,左右の山が堤体下に切り込むように迫っているので高く見えます。

 

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ゲートの合間から。ワイヤー細くないですか?

 

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しかも巻き上げは片側1本ずつで大丈夫? 

 

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上流側「窓龍湖」。ブルーシートの中身が気になる。

 

 

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水鳥の描くV字が美しい。野鳥観察を趣味にする人の気持ちが分かった気がします。

 

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上流側の山にガードレールが見えたので,歩いて行ってみるとゲートを正面から見ることができました。(歩いたら結構な距離がありました。道は狭いですが車でも行けます。)

 

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ゲートをアップで。ほぼ正方形に見えます。

 

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管理事務所の裏手にあるインクライン

 

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管理事務所の玄関には,平成30年に取水ゲートを交換した際の古いワイヤ(左)と新しいワイヤ(右)が展示してありました。古い方は原型が分からないほど錆びています。

 

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ダム湖の一部区域で魚釣りを試行的に解禁しているとのこと。外来種が増えすぎたのか,訪問客数を増やせと言われているのか。

 

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五分咲きの梅の木ごしに見る管理事務所。そういえば,ダムで梅が咲いているのを見たのは初めてかもしれません。

 

ダムサイトのいたるところに梅・桜・藤・つつじが植えられていて,5月ぐらいまで花を愛でることができそうです。

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今日は,先週弥栄ダムなどを訪れた時よりも随分冷えていて,広島市内でアクセスのよい場所にありながら人はほとんどおらず。梅もひっそりと咲いている感じ。

 

吾がためか 魚切が梅 咲きたるは

 

なんておこがましいですかね(笑)

 

公認ダム全踏破まであと10基

51 渡之瀬ダム

小瀬川ダムの次に訪れたのは渡ノ瀬ダム(場所)。

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発電用の重力式コンクリートダム。昭和31年竣工ですから弥栄や小瀬川より古いことになります。

 

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6キロ離れた大竹市の玖波発電所に水を送っています。大竹の臨海地域は,広島市と同様に戦後,旧軍施設跡地に企業誘致をして,昭和30年頃には石油コンビナートがつくられるなど,急速に発展した地域です。

 

県西部のダムにはこうした発電系のダムが多く,特に昭和30年代には広島市周辺にいくつもつくられており,広島県の高度経済成長を支えていたといえます。

 

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天端は車NGですが,開放はされています。

 

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天端の入口にはどーんと発電系ダムならではの取水設備があります。壁の感じからこの建物だけは新しそう。

 

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弥栄の赤,小瀬川の青,渡ノ瀬の黄色は意図的に?

 

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吸い込まれそう。

 

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ローラーゲートは飾り気のない薄グレー。次に交換か塗り替えをするなら黄色にしてほしい。

 

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ゲートに1号,2号って何のひねりもないネーミング。いかにも実用重視なところがよい。

 

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天端の壁もいい具合に苔が生えて味があります。上の手すりは接合部のコンクリの色が違うから後付けでしょうか。

 

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ダム湖の渡ノ瀬貯水池。地図で見ると結構広いようです。

 

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推測ですが、この照明は竣工時よりもう少し後になって設置されたのではないかと思います。ちょっとデザイン感があるので。高暮ダムの時もそう思いました。

 

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右岸上流側からダムサイト。砦のような姿。

 

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「中國」「堰堤」ですよ。ヤッシーや小瀬ガッパのような「ゆるキャラ」なんて許されなさそうな風格。

 

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ダム脇には中がつぎはぎだらけのトンネル。いや…「隧道」というべきか。出口がすぐ天端への進入路なので天端から車で出る時はご注意を。

 

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天端付近はあちこちフェンスでガードしてあるわりに,反対側から簡単に入れてしまう(入らなかったけど)。もう人間ならとっくに定年退職しとる年齢だから、細かいことは言いなさんなという雰囲気。

ちなみに,今回は右岸も左岸も堤体下に入り込む道を見つけられませんでした。オープンのようだけど,肝心な所はスキがない。

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大竹の工業発展に尽くしてきた渡之瀬ダム。西向きに構えて小瀬川や弥栄の方向を見つめる昭和のいぶし銀ダムは,今の時代の趨勢をどう見ているでしょうか。

 

春愁や 令和の渡之瀬翁ながむ

 

広島県公認ダム全踏破まで残り11基