ダムのほそ道

広島県内(とその近県)のダムの訪問記録です。

山口14 向道ダム

温見ダムから北西に進み向道ダムを訪問。(2024.1.8訪問)
年末に訪れた菅野ダムのすぐ上流にあたります。

洪水調節・工業用水・上水・発電目的の重力式コンクリートダム。(ダム便覧では洪水調節(F)が記載されていませんが、ダムカードの情報に合わせます。)

日中戦争のさなかに竣工した日本初の多目的ダム。下流の旧徳山市には軍工廠も多く水や電力の需要があったと思われます。

壁に埋め込まれるように設けられた発電設備。秘密基地みたいです。

戦前ダムに特徴的なすり鉢状の減勢工

トーチカのようなゲート操作室。どこか戦争遺構の雰囲気。

ダム下は開放しているわりに天端は立入禁止。残念。


16万人を動員してわずか2年8か月で竣工したそうです。それだけダム建設が急務だったといえます。工事中の事故で犠牲になった人も多くいたのではないかと気になります。

ツボなレトロ感。白いゲートって珍しい。

現在は利水機能の大半は下流の菅野ダムが担っており、菅野ダムと連携して洪水調節をしているようです。

昭和の多目的ダムの先駆けだった向道ダム。令和の時代の「向」かう「道」やいかに???

 

山口13 温見ダム

末武川ダムからそのまま川沿いを上流に進み温見ダムへ。(2024.1.8訪問)

灌漑・工業用水・上水目的の重力式コンクリートダム

橋の右岸付近に車を停めて、徒歩で民家の前の未舗装道をダム下へ。薄暗い林を抜けると堤体が姿を現します。この瞬間が好き。

堤体真下まで行けます。左は小水力発電用の送水管。点検用の階段も昇ろうと思えば昇れる状態。ただ天端までつながっていませんし、危険なのでやめておきます。

久しぶりに「The ダム」という感じの赤いラジアルゲート。

ダム直下にわりと近年設置されたと思われる小水力発電所。家庭用の物置かと思うぐらいにコンパクト!

ダム下からの利水放流

天端に上がってきました。中央のゲート操作室までしか立ち入りできません。

まさに昭和レトロを感じさせるつくり

堤高36m…コンクリートダムとしては高くない方だけど、傾斜が急なので下流をのぞくとスリルなかなかあります。

なんか絵になりそうな風景。

半円形にせり出す取水設備は戦前のダムみたい。(このダムは昭和30年竣工)

いろいろ面白いものがあります。

主目的は灌漑・上水用としてつくられたダム。その後下流の下松市の工業が発展し、余剰分を工業用水として使うようになったようです。現在は、工業用水の取水量は減少にあるとか。

だから小水力発電ができるようになったのかな?


人口減少、一次・二次産業の需要減、豪雨災害の頻発、クリーンエネルギーへの転換などと時代と共に変わるダムの役割を感じずにはいられないダムでした。

山口12 末武川ダム

2024年のダム初めは、年末に引き続いて周南市近辺のダムへ。
新年1基目は末武川ダムです。(2024.1.8訪問)

洪水調節・河川維持・上水・工業用水・発電と多目的のロックフィルダム
ダム直下はフェンスで遮られ、しかも手前に山の一部があるので全景が見えません。

天端も含めてダム湖の周回コースは文学の碑などが置かれた公園として整備され、ウォーキングやジョギングをしている人がちらほら。下松の市街から近くアクセスも良いためか地元の方に親しまれる場になっているようです。

やっぱりロックフィルはこの均整の取れた壮大な斜面が魅力ですね。ブッシュがないとなおよかったけど。

上流もロックフィル。水位の痕が地層のようです。

ロックフィルのもう一つの醍醐味は得てして巨大なこの洪水吐。落ちたら這いあがれない…。

画像では分かりにくいですが導水路をのぞくと結構な迫力。堤高89.5mは山口県内最高のロックフィルダムです。

堤体下に見えるのは発電所

洪水吐越しに見る米泉湖。泉なの?湖なの?とつっこみたくなるけど、水没した米泉峡からのネーミング。取水設備が見えます。

ダムカードはこのモデルハウスのような管理事務所ではなく、上流の米川公民館で受け取ります。



ところで後日、下松市出身の知人に「末武川ダムに行った」と言っても通じず、周りがジョギングコースとして整備され…という話をしたら「ああ、米泉湖のことね!」と言われました。ロックフィルだからかダムという認識がなかったようです。

東海2 長良川河口堰(三重県)

年末に名古屋に帰省した時の記録です。実家には駐車場がないため、公共交通機関を使ってのダム活。何とか歩いて行けそうな最寄駅を探すのもまた「ダムのほそ道」的楽しみ方。

さすがに前回の愛知池のように駅から徒歩5分というわけには行かず、JR関西本線長島駅近鉄長島駅でも可)から約2kmの長良川河口堰へ。(2023.12.30訪問)

洪水調節・工業用水・上水目的の河口堰です。

長良川河口堰は、建設を巡って子供の頃かなり強い反対運動があった記憶があります。その後どうなったのでしょうか。

管理橋は通行止めになる日もあるようですが、歩行者は基本的に通行できるようです。

右岸の閘門(船の通り道)

右岸左岸それぞれに魚種や水位の状況に応じた魚道が設置されています。環境に配慮している感がうかがえます。

調整ゲートの操作室。この斬新なデザインは水滴をイメージしているそう。手塚治虫火の鳥に出てくる「ロビタ」に見えるのは僕だけ?

2段式になっているゲート。水位調節をより細かくできるようになっています。

上流、伊勢大橋から。

夕日をバックにしてみました。キノコのような操作室がずらっと並び、SF映画のワンシーンのよう。

河口堰についての資料が展示されているアクアプラザながら。残念「ながら」年末休み。(プラザが休みだとダムカードももらえません。)

ところで今回歩いたルートはこんなルート。伊勢大橋を渡って中州側から行こうとしたら、伊勢大橋の歩道が一部通行止めで、全長1kmkの伊勢大橋をいったん桑名市側に渡り切ってから400mほど折り返して中州に渡らなければなりませんでした。

おかげで管理橋にたどりつくまで30分以上かかってしまいました。公共交通機関で行くダム活は時間も考えなければいけませんね。

山口11 御庄川(みしょうがわ)ダム

DamMapsで確認すると、菅野ダムを含め周南市周辺にはアースも含めてダムが密集しています。

菅野ダムから数キロ南に温見ダム、さらにその数キロ南に末武川ダムがあるわけですが、そこまで行くと、川上ダムや島地川ダムまで足を延ばしたくなってしまうわけで。

周南市南部~西部は雪の影響が少なそうなので、別の機会に回すことに。

ということでR376を岩国に戻るように東進し御庄川ダムへ。(2023.12.28訪問)

洪水調節目的の重力式コンクリートダム。乗馬クラブの前の道を抜けると天端です。(車は天端までで行き止まり)

天端は途中まで進入可能。砂防ダム並みに狭い天端。

五瀬ノ湖。周りの山の木の具合からこれで常時満水位なんだろうけど、ダム湖に鳥が立てるぐらいなんて土砂が堆積し過ぎでは?…と思ったら

だよね。治水ダムとしての用をなすためにも早急な浚渫が望まれます。

天端横の階段でダム下に下りてみました。かつてはラジアルゲートがあったというクレスト。軸のみが残ります。両サイドの常時放流している穴がユニーク。

久々に堤体に触れるダム。こういう苔むし具合が好き。

ダム直下には分水工らしきものが。ダムの目的は洪水調節だけど灌漑などに少量利水しているのだろうか。

比較的小さな堤体のわりに減勢工は広め。さすが治水ダム。


かつてはどんなゲートあったのだろう…と眺めていたら早々に傾きかけた冬の日がゲートから差し込んできて神秘的な光景に。スマホでしか撮れないのが悔やまれます。
(*ここに来るまでの水越ダムでカメラがバッテリー切れになってしまいました。)

これにて今回の錦川沿いのダムめぐりは終了。周南市近辺にはまだまだダムがあるので、次回以降の楽しみにとっておきます。次はちゃんと充電していかねば(笑)

山口10 菅野ダム

水越ダムからR434を錦川に沿って菅野ダムへ。(2023.12.28訪問)

洪水調節・発電・上水・工業用水と多目的の重力式コンクリートダム

R434がそのまま天端になっています。


まず天端で目を引くのは、天端を覆うように設置された取水設備の操作室。後付けされたもののようです。

こちらが従前の取水ゲート。ゲートを間近に見ることができます。

住宅のように立ち並ぶラジアルゲートの操作室。こちらも後から作り直されたのではないかと思われます。

天端から下流をのぞき込むと、発電用の水圧鉄管が存在感を出していました。

右岸で折れ曲がっている天端。コンクリのカーブが昭和っぽい。

天端を見つめるように立つ婦人像。解説がかすれていて読めませんでした。

右岸寄りの白い部分は、上が空きスペースになっています。天端が国道なので、点検時などに通行止めにしなくて済むよう作業スペースとするのでしょうか。

管理事務所向かいにある慰霊碑。十数人の方が殉職されています。着工からわずか6年で竣工しており、かなりハードな工事だったのでは。

上流面。11月末にすでに貯水率が40%を切っていて、工業用水では節水が始まっています。

ダム下は行けないので、いろいろな場所から眺めてみました。先の水越ダムでカメラが充電切れになり、スマホ撮影なので望遠に難があり残念。

ダムカードはインターホンでその意を告げたら、「箱から自分で持って行ってください。」とのこと。管理事務所によって対応がいろいろですね。

暖冬とはいえさすがに熊はもう冬眠してるよねぇ。と思いつつ、ダム湖を眺めなら、冬晴れの下でお昼をいただきました。

ここまでの生見川ダム・平瀬ダム・水越ダム・菅野ダムのダムカードをもって、中国地方ダムマニアコンプリート認定まであと15基となりました!

 

山口9 水越ダム

中原取水堰からそのまま南下して水越ダムへ。(2023.12.28訪問)

発電目的の重力式コンクリートダムです。菅野発電所の逆調整池(発電所からの放流水をいったん貯留して安定的に下流に流すための貯水池)の役割があります。

管理事務所は国道からようやく車1台通れる天端を渡って右岸側にあります。

天端の高欄は、山口県特有の黄色りガードレール(左)に合わせたものか。

取水設備も天端に設置され、発電ダムならではのゴテゴテ感。いい感じです。

上流側からみたところ。
クレストゲートはラジアル3門なので角落ゲートは取水用ゲートなのでしょうか。

ダム湖にせり出す管理事務所。災害に耐えられるのか心配。

ラジアルゲート1門から絶賛放流中。少雨でどこも放流が見られない中、今回唯一開門放流していたダムです。

右岸側から。

なんとこの1枚を最後にカメラのバッテリー切れに。持ってきたはずの予備も充電し忘れており、以後やむなくスマホ撮影となりました。せっかくの放流なのに残念。

ラジアルゲートをアップで。1966年の竣工当時からゲートは赤色だそうです。

下流から正対することはできないので上流から全景を。

ところで、平日にもかかわらず水越ダムでは僕の見学中に他に2人の同志?がカードをもらっていました。ネットでは水越ダムは「平日のみ配布」となっているためでしょうか。(僕もそう思って来た一人ですが。)

実際には返信用封筒を現地で提出すれば後日郵送してもらえる旨の張り紙がありました。