ダム便覧に掲載されているダム(特にため池)の中には,位置未確認のものがいくつかあります。
その中の一つが雲田池。
結論から言うと,「雲田池は中国道と広島自動車道が接続する広島北JCTの建設によって廃止された(もしくは地下調整池にされた)」と考えられます。
【ダム便覧記載事項への疑問】
ダム便覧によると,雲田池の諸元は次のように記載されています。(2021.9.25現在)
左岸所在地:広島市安佐北区安佐町久地
河川名:太田川水系吉山川
目的/型式:A/アース
堤高/堤長:19m/40m
ダム事業者:鈴張九区
竣工:1941
このデータ,地図と見比べると?と思うことがあります。
「安佐町久地」には確かに「吉山川」が流れていますが,事業者名に冠している「鈴張」は同じ安佐北区内であるものの,安佐町久地より太田川をまたいで10キロ北の安佐町鈴張(旧鈴張村)のことだと考えられます。
(国土地理院地図にキャプション加工した)
鈴張九区というからには,おそらく一区~八区があるはずであり,町内会の区割りか農業生産地の区割りではないかと推定しました。
間に太田川という大きな河川があるのに,わざわざ灌漑用水を川をまたいで引くことは考えにくいですよね。
念のため,久地の吉山川沿いのため池を広島県がまとめている農業用ため池データベースや全国農業用ため池マップで調べても,堤高19m,堤長40mぐらいの池は見つかりませんでした。
【鈴張に雲田あり】
というわけで,安佐町鈴張にフォーカスして地図を見ていると,なんと「雲田」という字名を発見!
(出典:国土地理院地図)
広島北JCTと鈴張川の間に「雲田」地区はあります。
鈴張の他の場所や久地地域には「雲田」という地名は見当たりませんでした。
ため池の名前は,池のある地名や河川名(まれに関係者名)で付けられることが多いのでこの雲田地区に雲田池がある可能性大です!
ちなみに鈴張一区~九区までグーグルマップで検索すると一区,六区の集会所がヒットしました。
(国土地理院地図にキャプションを加えた)
九区の集会所は見つかりませんでしたが,国道261号線に沿って北から順に区割りがされているようなので,雲田地区あたりが九区ともいえそうです。
雲田池が近づいてきた!…ようにこの時は思いました…
雲田池を探して②につづく