ダムのほそ道

広島県内(とその近県)のダムの訪問記録です。

岡山50 矢谷池

一の谷池からR179に出て1.5kmほど西進。塚谷運動公園に向かって国道から下り,矢谷池に向かいます。未舗装路とのことですので,国道の高架下をくぐった先の広くなったところに車を停めて歩きました。(訪問日:2023.3.19)

灌漑用アースダム

ダムに向かって歩き始めるとすぐにこの札。「多くさん」(原文ママ)…それだけイノシシが出るってことか…。イノシシに遭遇するのも嫌だけど罠も怖い。

少し歩くと川沿いに無残なクオーレ(おそらく初代)が出現。ダム便覧の画像では,ボンネットが開いていたり,バンパーは外れていなかったりします。通りかかる誰かにいたずらされるのか,自然に劣化しているのか…この不気味さが先の溜池への高揚感を掻き立てます。

林道はやがて轍も消え,本格的な山道になって行く…

歩くこと10分弱で天端に到着。左岸側1/3は苔が生えています。

昭和前半期らしい角ばった洪水吐。ダム便覧では竣工が194Xとなっています。国土地理院の航空写真では1948年の時点で池の存在を確認できました。

天然っぽい放水路。一応,コンクリ製のようです。

上流面は土のままっぽいですが,よく見ると石のリップラップが確認できます(右)。

堤体下へは,先ほどの罠の警告が脳裏をよぎり,くくり罠だったら危険なのでやめておきました。

ところでこの溜池,どこを見ても取水設備が見当たりません。ダム便覧を見てもどなたもそれらしい画像を載せていません。もしかして,ため池としてはすでに使われていない?

地理院地図を見ると,受益地と思われる塚谷周辺には,「小鍛冶池」「紙屋池」があり,また灌漑用水も用途にもつ苫田鞍部ダムもあるため,山奥の矢谷池から給水しなくても足りるのかもしれません。ため池データベースによると小鍛冶池と紙屋池は地元の組合が管理しており,矢谷池は行政の所有・管理となっています。

しかし堤体の草が刈られているところを見ると,維持管理はちゃんとされているみたい。

記念すべき岡山ダム活の50基目は,罠・クオーレの残骸・見当たらない取水設備と,なかなかエキサイティングなため池でした。